伝統工芸産地の文化を耕す。
こんにちは、メトロクス・フクオカです。
デザインすることの意味を問い続けたデザイナー、城谷耕生さんの仕事を解き明かすトークイベント「デザイナー城谷耕生の仕事 耕す。」に参加してきました。
一昨年、若くして急逝した城谷さんが遺した文化とは―
その奥にある哲学は、実際に彼と触れ合い、創造してきた人々でないと語れない内容でした。
東京でデザインを学んだのち、23歳でイタリアへと渡った城谷さんは、アキッレ・カスティリオーニ、エンツォ・マーリという二人の偉大なデザイン界の重鎮と出会い、そして、現地での経験を糧に、故郷である長崎県小浜町でSTUDIO SHIROTANIを立ち上げ、地域に根ざした活動をされていました。
STUDIO SHIROTANIではじめに取り組んだのは、大分県別府の竹職人グループとの共同研究です。
この竹職人グループが「BAICA(バイカ)」。城谷さんはBAICAのディレクターとして職人がその仕事で生活していけるような道を切り開くべく、様々なプロジェクトや動きを起こしていきました。
私たちメトロクスが竹のあかり「SKランプ」を復刻するにあたっては、竹工芸の巨匠・近藤昭作先生から別府の若い職人さんたちへ、その技術を継承していただくところからスタートしました。
こうしたひとつひとつのプロジェクトがいくつもあれば、職人さんたちの生活の基盤になっていく―
城谷さんはそういうものを目指していたという貴重なお話が伺え、我々のプロジェクトもただ復刻するだけではない、意義/価値のようなものを皆さんに伝えていかないとな、と。
これはエンツォ・マーリとワークショップを行った際に、城谷さんがマーリから聞いた内容を、さらに私が簡単にまとめたものです。
ヨーロッパでは手仕事の職人の地位が低かったことに、マーリは違和感を覚えていたそう。
伝統的な工芸といえども、決まった材料を、決まった技法と手順で、決まったモノを作っているだけでは、文化的ではないというようなことです。
メトロクスの姉妹ブランド・nuskoolでは、別府で活動する若手の竹職人さんたちに竹編みの技法を使ってグラフィカルなアートに仕上げてもらった「バンブーグラフィック」を開発しました。
古くからある伝統的な編みを職人ひとりひとりにアレンジしてもらい誕生した製品です。
竹はただカゴを編むだけじゃないということ、職人個人の創作が反映されているという点では、前述のマーリの主張と合致する点があると感じました。
職人さんは、竹材屋さんから竹材を仕入れ、カゴを編んだり、小物を作ったりするわけですが、今、その竹材屋さんがどんどん少なくなり、職人さん自らが山で竹を育て、伐採するといった動きも始まりつつあるようです。
◆竹材を作る工程をご紹介している記事はこちら
メトロクス東京(店舗限定)で取り扱いしている、ヒガシ竹工所さんのグリッドシリーズも、そういった理由から現在生産中止になっています。
キューブのLサイズとSサイズのみ、数点残っていますので、気になる方はお早目にお問い合わせください! 詳細はこちら
ちなみにヒガシ竹工所の東 浩章さんによるバンブーグラフィックはこちらです。
話が少しそれてしまいましたが、技術の継承や工芸の魅力を伝えるだけでなく、その後の文化的発展と地域経済に重きを置いていた城谷さんの活動は、今度は誰かが繋げていかないと感じた次第です。
今回のイベント、城谷さんのお名前「耕生」さんから「耕す。」という名称になったのかと安直に受け取っていましたが、「文化を耕す。」という意味の方が深かったんだなと。
イベントサイトはこちら https://tagayasu.studio.site/talk
こぼれ話。
BAICAという名前はどこから?
竹を地獄蒸し成型したブラケットランプ「APTENIA」の試作を見た竹工芸家の早野久雄先生(BAICA代表・大橋さんの師匠でもある)が「こりゃぁ、梅花(ばいか)じゃな」とぽろっとおっしゃったそう。
2006年、県花でもある梅の花が豊かに咲く季節3月の出来事で、城谷さんと大橋さんが「これだ!」と思ったんだとか。