自由でユニークなレディ・メイドデザイン

こんにちは、メトロクス・フクオカです。

突然ですが、これは欧米で普及していた古いトラクターの写真です。

このトラクターのシート、どこかで見た気がしませんか?

そう、アキッレ・カスティリオーニが50年代に発表したチェア「メッザドロ」のシート!

こちらが「メッザドロ」。見紛うことなく、トラクターのシート。

カスティリオーニは当時『最もスタンダードで快適な座面の形状は何か』を問い、それがトラクターシートだという結論に達したそうです。

視野が広い。

カンチレバーの部分もトラクターとそっくりですね。

カスティリオーニは最適なスプリングサスペンションを研究し、1本のカンチレバーを採用。
確かに、腰掛けてみるとバインバインと少し弾むような感覚があります。
この1本のカンチレバーでスプリングを効かせているとは思わないじゃないですか。座ってみないとわからないギミックです。
ボキっと折れたりはしないですよ(当たり前!)

カンチレバーってなに?

カンチレバータイプの代表例

簡潔にいうと”片持ち構造”のこと。椅子でいうと、4本脚じゃなくて、こういうタイプの脚のことをカンチレバーといいます。

カンチレバーとシートを固定するナットには、自転車用のウイングナットが使われています。
このパーツがひとつあるだけで、インダストリアルな雰囲気がさらに際立ち、デザイン的なスパイスにもなっていますね。

そして、シートも脚部もスチール製ですが、ここで木材が登場します。

最も基本的なスタビライザーは何か。カスティリオーニは、それが『丸太か木材の棒』であると結論付け、帆船の横木がベースとなりました。

それらを組み上げた結果がこの「メッザドロ」。
つまり、レディ・メイドな製品なわけです。

一目見たときに感じる違和感というか、不連続性。でもその本質を紐解いてみると、機能を追求したあまりに辿り着いた、完成されたデザインであることがわかります。

こんなにユニークで奇妙な見た目をしているのに、とても合理的で機能性を追求した結果なんですって。

改めて、おもしろい世界だなと思わせてくれるプロダクトです。

レディ・メイドとは

日常生活における既製品・大量生産品を芸術作品へ取り込む作風のこと。マルセル・デュシャンが考案した芸術上の概念。

「メッザドロ」のオリジナル(モック?)がデザインされたのは50年代のこと。
1954年の第10回ミラノ・トリエンナーレに展示されたのが、世に出た最初です。
現行モデルよりも丸みを帯びたシートが使われていました。

1954年当時のモデル

その後、現在のバージョンが1957年の展覧会に出品されました。
でも、あまりに前衛的でその頃は製品化はされなかったそう。

1970年になってからザノッタ社が製造をスタート。高い評価を得て、現在に至ります。
ちなみに座り心地を向上するうえで、オリジナルよりも幅が広く四角いシートに変えています。

お届け時にはバラバラで届きます。
とはいえ、留めるネジは3つだけ。力も要りません。こういうところも合理的。

パーツ単体で見た方が、レディ・メイド感がより際立ってますね。

カスティリオーニのデザインを語るうえでのキーワードのひとつとして「自由」という言葉がしばしば使われます。
レディ・メイドと近しいワードとして「リ・デザイン」が挙げられますが、リ・デザインは元のデザインをより良く『発展』させるといった筋道があって、非常に論理的です。
一方、レディ・メイドは『転用』の理論であり、より意外性に富んだ発想に結びつきます。ある種、ジョークのような、遊び心のような。ユニークで自由な側面がレディ・メイドには存在しています。

個人的にカスティリオーニはすごくお茶目な人だなと。
というのも、文献で見かける彼の写真がこんな感じなんですよ。
昆虫みたいな風貌のゴーグル、パンチありますね。大理石職人が粉塵から目を守るゴーグルだそうです。いつも自分で身に着けて使い方を教えていたらしい。とはいえ、そうした瞬間のスナップが多いので、常日頃からこんな様子だったのではと勝手に想像しています。

こうした彼のユニークな人柄も踏まえると、製品への愛着も深まってきますね。

こちらは、メッザドロと同じくレディ・メイドデザインの「セラ」。
見たまんま、本物の自転車のサドルです。
はっきり言って座りにくい。いや、座ってらんない。
これがカスティリオーニだよね!っていう感じです(???)

メッザドロセラは実際にメトロクス店頭で座っていただけます。

その他にもオンラインショップではカスティリオーニのプロダクトを豊富に取り揃えています。
ぜひ、これがカスティリオーニ!を堪能してみてください。

アキッレ・カスティリオーニのプロダクト一覧

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