生活に寄り添うパーソナルな掛時計
こんにちは、メトロクス・タカダです。
この度、渡辺力氏が手掛けた「リキスチールクロック」の新作が発売となりました。
リキ スチールクロック(WR17-10)ホワイト 12,960円(税込)
リキ スチールクロック(WR17-10)ブラック 12,960円(税込)
リキ スチールクロック(WR17-11)オレンジ 12,960円(税込)
1977年にセイコーより発売されていたモデル(当時の製品名:セイコークオーツクロック)が、復刻生産という形で再び製品化が実現しました。
戦後、まだデザインという言葉が一般的でなかった日本のデザイン黎明期にキャリアをスタートさせた渡辺力氏。デザイン業界を牽引し、プロダクト、インテリアなど多様な分野のデザインを手掛けました。
特に掛時計の製作は、それまでの壁掛け時計の常識を覆す新しい試みとして発表した「小さな壁時計(1970年)」のデザイン以降、氏が傾注してきた分野の一つと言えます。
ゼンマイ式のボンボン時計の時代から、部屋が個室化して小さくなっていった当時。その生活様式の変化をいち早くとらえた氏は、よりパーソナルな時計の製作をテーマとしました。直径12センチ、ゼンマイからトランジスター方式へ技術の革新によって可能になったその小ぶりな意匠は、当時、恐らく世界で一番小さい壁時計ではないかと言えるほど、先駆的なものでした。
そして、その後、クオーツ方式の実用化により、月差何秒という極めて正確なものとなったクロックに相応しいデザインとは、というテーマと共に、視線はさらにその実用性へとむけられました。
もちろん、小さくすれば視認性は下がる。それならば、実サイズよりその印象を小さく感じさせる、といった考え方から、1977年「内に集中する力と外に広がる力」の絶妙なバランスを持ったデザインが完成します。
「セイコークオーツクロック」の製品パンフレットより(1977年頃)
当時の製品パンフレットにも渡辺力氏のコメントが載っていました。
「セイコークオーツクロック」製品パンフレットより(1977年頃)
12方向のラインとアラビア数字の絶妙なコンビネーションにより、大きく見せ、小さく感じさせるパーソナルクロックの一つの完成形を作りました。
そばに近付き、少し離れてみれば、体験していただけると思います。
「あまりにそっけなく無表情なものでも困りますが、かといって、すぐにあきのくるような刺激の強いデザインは避けねばなりません。」と氏の言葉にもあるように、空間を選ばないシンプルさがありながら、無個性ではないデザインが魅力です。
渡辺力氏の手掛けたプロダクトを見ると一貫してシンプルで、てらいがありません。必要ないものを排除した、引き算の美学が、氏のデザイン哲学の根底にあるように思います。
それは、いつの時代でも古さを感じさせないデザインであり続けるはずです。
氏のクロックは、特に贈り物で選んでいただくことが多いのですが、先述したように、空間を選ばず、常に顔を合わせるけど飽きのこない、生活に寄り添ったデザインだからこそなのだなと改めて納得しています。
実物は、メトロクス東京店にて展示しております。
是非とも間近でご覧ください。